良好な立地条件   (広島藺業協会より協力を得ています)

1.適地条件

1気象
 備後表の産地は、年平均気温が12〜16℃、冬期間は積雪か無く、3月から7月中旬までの積算日照時間は700時間以上である。株張りの進む3月から5月の間は温暖晴天で、茎の伸長旺盛となる6月は風か弱く、曇天または適当な降雨かある。7月の収穫期には日照時間か多い。

2土質・地形
 耕土か深い埴壌土または壌土て,有機質に富み,西日の強くない排水良好の棚田地帯。

2.栽培管理

1 品種
   重量感と耐久性のある備後表の原料としては、中細種で茎の引張り強度の強いことか、必須の条件である。現在広島県で普及している品種は分けつ型の「せとなみ」が主力を占め、その美麗さは他の品種の追随を許さない。

2 育苗法
   広島県の育苗は畑苗法か大部分を占めているが、大規模経営では増殖率の高い八月苗法を採用し、できるだけ畑苗の素質に近づける管理を行っている。

3 植付
   植付けは12月を中心に11月下旬から3月中旬にかけて行い、他県に比ぺると遅い。植付株は新芽10本以上の大株である(他県は5〜6本)。植付密度は17cm正方形植または20cm×15cmの長方形植てある。

4 水管理
   茎を細くし、引張り強度(粘り)を増す必要から、栽培期間中はできるだけ落水し、根群の発達を促し、地上部の生育を健全に行わせる。6月の茎の伸長期には2〜3cmに湛水して、十分に水を供給し、湿度を高めて茎の伸長を促す。7月の収穫期には落水して収穫作業を便利にする。しかし、この時期は高温低湿でいくさ茎からの蒸散が激しく、茎が萎凋しやすいので、地面が白くならないうちに、収穫期間中でも灌漑または散水するなど、綿密な管理を行う。

5施肥
 品質特に茎色と茎の引張り強度を重視するため、急激な生育をさせることは避ける。特に肥料費は高くなっても、茎の光沢を良くすると言われる有機質肥料を多く施用している。

3.収穫乾燥

1刈取り
 刈取適期は、茎が充実して濃緑色になり、徐々に光沢を出し、適度の硬さと弾力を感じるようになる7月中旬である。茎の先端は2〜3cm先枯れが進んでいる位が畳表の原料として適する。他県では収穫時期が早い。  広島県の刈取りの特徴は、陽射しの強い日中を避け、早朝または夕刻に刈取りを行う。また、刈取ったいぐさに直射日光が当たると、茎が萎凋して染土の付着か悪くなり、発酵の原因となるので、その取扱いには特に注意している。
2泥染め
 備後表か他県産畳表と最も異なるところは、使用する染土が違うことである。泥染めは、染土を水に溶かし、その中にいぐさを浸潰し、粘土コロイドを茎に付着させ、ケル状被膜で茎の表面を袋状に覆う作業で、繊維の糊付けに似ている。その効果には次のようなものか挙けられる。

  @乾燥を均一にし、促進させる。
  A色沢を良好にする。
  B茎を保護し、変色を防止する
  C畳表独特の優雅な香りを付与する。
  D貯蔵中の水分の調節を行う。
  E茎を滑らかにし、経糸によく馴染ませる。

 広島県産染土は、いぐさ産地付近の古生層または花崗に由来するもので、砂分が多く、空気に晒しても変色変質しない。 また、これらの染土で泥染めしたいぐさは、水の吸収か速く、極少量の水て足りるため、水浸し(カシ)の後、短時間で 製織が可能で、製織後の乾燥も速いしたがって、備後表は香りが良く、染土の被膜が厚く脱落しにくいので、長期間当初 の色調を保ち、変色は徐々に進行するので目立たない。また、変色後は黄金色となり光沢を増す。

3乾燥
 天日乾燥における広島県産いぐさの特徴は、いぐさを丁寧に取扱うことと、短時間で乾燥し、陽射しの強いときに収納 することであった。火力乾燥においても、天日乾燥と同様に丁寧に取扱う。火力乾燥では、温度を70℃以上に上げると乾 燥は速いが、いぐさは青味が強く弾力性が弱くなるのて、60〜65℃の比較的低い温度で乾燥する。

4.製織・流通

 畳表製織の面から備後表の特徴を述ぺると

  1. いくさの選別は寸法たけに頼るのではなく、いぐさの品質によって選別寸法を決める。備後表の名にふさわしくない原料は使用しないか、または、ランクを下げて選別を行う。これらは備後表独特のものである。

  2. 製織技術か綿密で優れている。これは、昔からの伝統を持っており、後進県に負けないよう絶えず工夫と努力がなされている。

  3. 優良な経糸を使用している。優秀な畳表を製織するには、伸縮が無く、強度の高い経糸を使用しなければならないので、備後表はほとんどがマニラ麻を含む麻糸表になっている。

  4. 1枚の畳表に打ち込むいくさの本数が多いため、畳表の厚さか厚く、重量感と耐久力のあるものになっている。

  5. 規格が多様で、一枚一枚厳重な検査を行っている。